長島ダム見学記(2008/02/16)

静岡県中部の大井川の上流に国土交通省管轄の治水ダムで長島ダムというところがあります。ここのダム内部の見学ツアーに行ってきました。

きっかけは2007年の初秋に近所にドライブに行ったときに、道の駅にある無料パンフレットで「DAMZINE」というものがありました。これが長島ダムの季刊のパンフレットで、この中に翌年2月にダム内部の見学ツアーがあるとのことで、これに応募しました。
するとすっかりこのことを忘れていた1月に電話で連絡があり、当選したことと日程の確認がありました。僕の希望は2月16日か23日にしていたのですが、23日ならこのパンフレットの取材があるとのことでした。しかし23日は出張が決まっており、ちょっと残念ですが16日でお願いしました。

当日は晴れて朝は寒かったのですが、昼間はそこそこ暖かく風もない、絶好のダム日和?でした。同行するもう一組の新婚夫婦と浜松市内で待ち合わせて、私の車で4人で出かけました。先ずはR1でバイパスをつなぎ掛川の道の駅で寄り道してから、金谷から大井川に沿って北上します。川根の千頭の駅前で昼食をとって更に北上して、寸又峡方面から接阻峡方面に行きます。この道は僕はかなり昔に井川の林道にTS125で行ったきりで、ダムはその後にできているので、長島ダムを見るのは初めてです。トンネルを抜けて道を下ると、やがて長島ダムが見えてきました。

これは美しいダムだと思います。いろいろとダムは見てきましたが、ダム本体だけでなくまわりまでデザインされていることがわかります。写真は下流側から見たもので、左側にある管理事務所に行きます。するとたくさんの人がいてさらにテレビの中継車?やプレス関係者がいます。あれ?今回のツアーはけっこうたくさんいるのかな?取材もあるのかな?と思っていたら、やがて中から国土交通省の方がやってきて名前を呼ばれました。
その方が今日僕たちを案内してくれる方で、他の人たちはなんと今日ここで映画の撮影があり、そのスタッフとのことです。そして今回の見学ツアーは僕たち4人だけとのことでした。
映画は・・・書いていいのかわかりませんので、来春公開の映画といまはしておきます(そのうち公表します)。
さて、そういうことで見学ツアーははじまりました。まずはパネルと模型で長島ダムの説明を受けます。これを簡単に書くと、長島ダムでは商用の水力発電用ではありません。長島ダムは他の電力会社のダムと違って、目的は治水と灌漑用水、水道水、工業用水の確保としています。そしてダムの構成は強化コンクリートの堤体による重力式のダムで、と6つの常用洪水吐(コンジットゲート)と2つの非常用洪水吐(クレストゲート)からなります。ま、ダムについてそれ以上の詳しい話は別のページにいくらでもありますから、そちらを検索してください。
さて、見学はそのまま管理事務所の最上階に行きます。

ここは制御室です。ダムは流量によって口をどれくらい開けるかをきめ細かく制御する必要があり、そのためにダムコンというコンピュータによって制御されています。また万が一、システムに問題があったときのためにハンドによる制御も可能になっています。そして下流への警報装置や、同じ川の上流や下流の他のダムの情報などの流域に関する情報、ダム各所の警報機や監視カメラや地震計などのダム自体の監視情報、気象庁や上流域の雨量計などのまわりの環境に関する情報などが一堂にここで監視制御されているそうです。

制御室から管理棟の屋上に出ます。ここからはダムの上流側を見ることができます。今年は冬の雨が少なく貯水量はかなり低いそうです。たしかにダム湖の水量は目に見えて少なかったです。

 

これは流木止めのフェンスです。実際にゲートに流木が挟まると、口が閉まらなくなり、その隙間がたとえ30cmであっても大変なことになるそうです。なお中央は監視艇がここを通るときのためのゲートです。

よくダム池には噴水があがっているのを見かけますね。これはてっきり観光用のサービスだと思っていましたが、これには意味があって、噴水によって水を循環させてアオコなどの発生を抑えて水質を保つためだそうです。

 

屋上には風速計等の気象データ収集機器のほか、マイクロウェーブのアンテナがあります。これは気象庁とのデータリンク用だそうです。

 

エレベータで降りて、いよいよ堤内に入ります。通路は電気ケーブルや非常用の重油の経路などが通っています。なんかわくわくしますね。

 

これが堤内の案内図です。管理棟から降りて、通路を通って中央のエレベータでさらに降りていきます。

 

エレベータだけでなく階段でも下りれますが、かなりの急勾配です。

 

エレベータはテロ警戒のために入り口にゲートがあって施錠されています。

まずはコンジットゲートのゲート室です。ここは上部なのでゲート開閉用の大きな油圧シリンダーが見えます。

 

これがゲート室の図です。ゲートは支点をもとに扇型の巨大なゲートを油圧シリンダーで上下させるつくりになっています。

ゲート本体を見下ろしたところです。ゲート表面は厚いステンレスで覆っていて、堤側は特殊な強化ゴムでパッキンされています。

ゲートを開けると、ゲート室は急に水が満ちてくるので、そのための空気を抜く穴があります。そのときは風速40mにもなるそうで、そのためゲート室の出入り口は扉が2つあります。

 

ゲートは滅多にあけることはありませんが、メンテナンスや動作確認のために動かすことがあります。その際には外にある非常用ゲートをスライドさせます。しかしこのようなシャッター型のゲートだと片方だけが水圧がかかっている状態だと、開け閉めができません。そこでゲート室に水を出し入れできるポンプが装備されてます。ついでにこのポンプに蛇口もつけて掃除とかにも活用しているそうです。

ついにダム最深部に行きました。ここだけでなく各所にこのような計測器やセンサーが設置されてます。これはダム本体の傾きを調べる装置で、ワイヤで吊るしたものと周りの差で細かな傾きを計測します。知らなかったのですが、ダムのような巨大なコンクリート建造物でも、片方に水、片方が空気なので昼と夜の温度差で上流側や下流側に少し傾くそうです。

計測器室の中には地震計もあります。またダムが構築されている岩盤自体の傾き計も備えられています。

岩盤からは少量の水が染み出すそうで、これを抜いています。地下水でこのあたりは寸又峡や接阻峡といった温泉地なので硫黄がふくまれているので、温泉の匂いがします。

コンクリートの重力式ダムはコンクリートをブロック単位で流していくので、どうしても目に見えないような継ぎ目があり、ここから少量の水が滲み出すそうです。これを出すのがドレン孔です。ただしコンクリートは時間とともに石灰分がしみだしてこの継ぎ目を埋めていくので、だんだんと滲みだす量は減っていくそうです。

これらの不要な水をこのポンプで排水しています。

 

長島ダムは商用発電はやっていませんが、自分が使う分の発電をしています。この発電のための水路です。触ると振動を感じて中に水が流れていることを感じられます。

 

これが発電機です。この中でタービンが回っているわけですね。

 

発電機室から上に上がると・・なんとそこはダムの真下でした。ダム本体の真下なんて出たことがないので皆大喜びです。

 

常用の排水口からの放水です。できればゲートからの放水を見たかったのですが、ゲートでの放水はよっぽど降った場合だけで、クレストゲートにいたっては稼動開始の最初に満水まで貯めたとき以外は一度も開けた事はないそうです。

 

ダムの減勢工(ショックを緩和させる池と曲がった通路)の上の橋を渡って、右岸から左岸に移ります。映画の撮影をそこにある昔の鉄道のトンネルのところでやってました。近くも通りましたが、著作権の問題もあるので写真はこの程度で・・・パトカーはもちろん偽物です。「和堀800 ・・」という有り得ないナンバーに付替えてました。

 

またダム本体に入ります。逆光だったのですが、逆にそれがいい感じのダムの写真が撮れました。

ダム内部に入ると急勾配の階段をあがってダム中央の通路に向かいます。振り向くとかなり怖い階段でした。通路からエレベーターに乗って、今後はダム上部の通路に行きます。

 

ダム上部の通路の上はすぐダム上の道路です。これは説明を聞きそびれてしまったのですが、非常用の外側にあるスライド式のゲートの巻き上げ機だと思います。

 

クレストゲートのゲート本体です。クレストゲートは常に水圧のかかるところではないので、コンジットゲートよりは単純なつくりになっているようです。

 

通路の窓から下流側を見ると足がすくみます。

 

案内の方から高いところは苦手ですか?と聞かれました。本当は僕はダメなのですが、せっかくの機会なので大丈夫と答えました。そしてこの通路を抜けると・・・

なんとクレストゲート横の保守用の通路です。足元は何もありません。これは足がすくみます。ちょっと乗って、下を見てブルって、それからすぐに戻りました。怖っ〜〜。

 

このハッチは機器の搬入用だそうです。なんでもでかいです。

ちょっと上がって、ダムの上の地上に出ました。ダム上はちょっとした展望所になっています。さっきのハッチは表から見るとベンチにしか見えません。このあたりもデザインされています。

その先にはダムの上にちょっと張り出た展望ステップがあります。下はスリットで足元に何もないことがわかります。でもさっきの方が怖かったです。ここで僕らは映画のタイタニックごっこをやりました。妻はいやがってましたけど。。

 

さっき立っていたクレストゲート横の通路です。こうして見ても怖いところです。

管理棟の横には湖面監視用の船の艇庫があります。ここから斜面のレールを伝って人が乗ったまま、船を上げ下げするそうです。
この後は管理棟に戻って、お話を聞いて最後にダムカードをいただきました。ダムカードにもいろいろな記号があってマニアックです。
見学ツアーはこれで終わりです。約2時間ほど、本当に丁寧に見せてくれました。そして感心したのは安全管理体制と非常用にいろいろと考えられたバックアップ体制の存在です。

ダムは普段は接することのない巨大構造物で、現代のピラミッドだと思います。なんか尊厳があって、その内部を見れるのは本当に楽しかったです。またその内部は何か要塞のようで、なんともいえないワクワク感がありました。また機会があればダムの見学をしたいと思います。

 

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