GSA2008見学記(2008/07/19)

岐阜県飛騨北部の神岡は古くからの鉱山の町で亜鉛などの採掘をしていました。しかし現在では鉱石の採掘は終了していますが、この坑道は今も使われています。それは研究施設としての使い方で、地下1000mという条件をうまく利用してニュートリノの研究施設がこの神岡の鉱山跡の坑道に作られています。
僕は詳しくは無いのですが、ニュートリノとはいろいろな物質を突き抜ける粒子だそうで、これを研究することにより星の誕生や地球の内部構造の研究ができるそうです。さてニュートリノについては詳しくは他で調べてください、僕が興味があるのは研究内容でなく研究施設ですから(笑)。

この神岡鉱山の施設は一般の人は見ることや入ることは通常はできません。しかし年に1回2日間だけ一般公開ツアーが開催されるのです。このツアーが今回参加したジオスペースアドベンチャー(Geo Space Adventure:GSA)です。
今年の2月に後輩夫婦と長島ダム見学に行ったあとに、この後輩夫婦からGSAの話があり、だめもとで応募してもらったのが5月のことでした。というのはこのツアーは有料(\3500)にもかかわらず、大変人気があって毎年応募しても当たらない人がいるとのことでした。ですので希望日時をどう選ぶかが肝と思い、じっくり相談して初日の午前中にしたのですが、これが当たったのかうまく当選して、連絡がきたのが6月の末のことでした。そこから宿をとったり、その前後の日程を考えたりで、あわてて準備しました。

さて前日から近くの流葉というところで宿に入り、翌日のツアーに備えます。僕らは第2便で7時50分に集合ですので、7時半に宿を出ることにしました(宿の食事時間をちょっと早くしてもらいました)。当日は晴れですが、高原は涼しくて気持ちのいい朝でした。もっともツアーはずっと地下なので天気は関係ないのですが、それでも晴れのほうが気持いいものです。集合場所は最近に廃線になった神岡鉄道の奥飛騨温泉口駅ですが、先導車がナビに騙されてちょっと迷走したので着いたのはギリギリでした(汗)。ここで受付を済ませて観光バスに乗り込みます。バスは2台、全部で60人くらいだと思います。

 

バスは駅を8時に出発し国道41号線を北上し、とつぜん標識も何も無い細いわき道に入っていきます。清流沿いの細い道をいくと坑道入り口に到着しました。ここでテントの下で今回案内してくれるボランティアスタッフの方からガイダンスがあります。とにかく坑道内は寒いこと(13℃〜15℃)、トイレが少ないことなどの注意があります。またヘルメットは坑道内ではずっとかぶっていないといけないそうです。あと嬉しいことに写真は撮り放題とのことです。

坑道の入り口はその近くにいるだけで涼しく、このときは気持ちよかったです。

ここからはCO2排出のすくないディーゼルでかつ排気にフィルターのついた特別な車しかはいることはできません。ここでツアーは青印の入ったヘルメットの青組と赤印の赤組の2つに分かれて、それぞれ小さなバスで入坑します。地下1000mと聞いていたので、僕はてっきり地下に下っていってからさらに降りるのかと思っていたのですが、この坑道は山の麓から水平に移動してiいって、山の頂上から,標高差1000mの山の真ん中に入るということでした。エレベーターとかトロッコとか勝手に期待していたのでこれはちょっと残念でした。

坑道内は寒くて、むき出しの岩を見るとわくわく感とちょっと不安感もあります。もしここで・・・なんて考えないようにした方がよさそうです。

 

最初は東大のスーパーカミオカンデ施設の見学です。入り口にはノーベル賞を受賞された小柴教授や歴代首相のサインが書かれたドアが飾ってあります。

入るとまずボランティアスタッフによる紙芝居でのニュートリノの説明です。絵は優しいのですが、内容も抽象的でいまいちピンとしません。事前にもう少し勉強して来るべきでした(反省)。

次に実際のスーパーカミオカンデの真上に移動して表示されるニュートリノの画像や機器の説明を受けます。

天井はドーム状でアルミ?のカバーがついてます。

PCに受信した素粒子を画像処理したものが表示されます。この全てがニュートリノではありません。

スーパーカミオカンデは巨大な円柱形水タンクの中に光電子倍増管がしきつめられていて、水に当たったニュートリノが発するわずかな光を受信して、それを映像化する施設です。水は徹底的に不純物を取り除いてあるそうで、そんな訳で中を見ることはできません。この蓋が開くのは再来年?のメンテナンスのときです。

通路には水の濾過装置があります。これでスーパーカミオカンデ内部の水を浄化してます。ずらっと並んだフィルタが圧巻です。

また内部にある光電子倍増管が展示されていました。なんとこれは地元の浜松ホトニクス社の製品でした。ちょっと嬉しかったりします。

スーパーカミオカンデの見学が終わると、また坑道内を徒歩で移動します。坑道は照明が無いところが多く、懐中電灯は必需品です。ガイドの方の合図でみんなで懐中電灯を消して暗闇体験をしたりとか、退屈させません。そうこうして行った先は坑道の途中のような場所でここで神岡鉱山の歴史の紹介がスライドショーでありました。

途中に寸劇があって、当時の再現ということで赤フンドシ姿の人が再現してくれました。この寒いなかを熱演、お疲れ様です。もちろん当時はヘルメットはありませんけど。

突然、奥の坑道から坂を上ってきたのは川崎重工製のシャベルカー、ローダーです。高さのない坑道で効率的に鉱石をすくうための工夫がたくさんあります。また運転席も低くなってます。

こちらは岩盤掘削のための爆薬を入れる孔をあけるジャンボというフィンランド製の機械だそうです。先頭のビットが水を出しながら回転して岩盤に孔を開けます。これは実際に実演してくれました。そうそう、ここ神岡の岩盤は日本でも有数の固い岩盤だそうです。

これが先端のビットです。意外に尖ってないんですね。

操作席に入れたので記念撮影です。今日はこの進行ポーズです。

嬉しそうですね。。。。。はい、嬉しかったです!

また坑内を移動します。移動途中に別の坑道の入り口があります。持参したLEDライトで照らしても奥は見ません。て、

今度は神岡鉱業株式会社のスライドの説明があります。説明の途中、岩盤の天井でキラッと光るのは鉱石とのこと。しかしここは他の坑道口が開いていてそっちから冷気があがってきてとても寒かったです。

しかしここではこのあと鉱石を即売していました。すごい人だかりでなかなか近づけなかったのですが、これがけっこう高い。なんか海外パックツアーでお土産屋に連れて行かれたようで、あまりいい気はしませんでした(私はね。ちなみに皆さんはけっこう1000円程度の小さな鉱石を買ってました)。

続いては東北大のカムランドです。カムランドもニュートリノの研究施設で、密閉した部屋の中に光電子倍増管を入れるということは同じですが、中は水でなく油で満たすそうです。

スーパーカミオカンデに比べると説明はやや専門的なのですが、わかりやすくパンフレットも充実しています。ニュートリノの振動による減少の確認と、それによって質量があることの実証など、成果もわかりやすかったです。とはいっても基礎物理学なんて、私にはさっぱりです。
しかし施設の見学が無いのが寂しいです。建造物好きとしては、説明だけでなく何か一部でも施設や装置を見たかったです。

また坑道を移動すると、坑内から染み出した水を飲めるところがありました。ここでもお持ち帰り用ペットボトルが\100。これを見て次に行く人がいましたら、空のペットボトル持参をお勧めします。あとこの水、あまり大量に摂取しないほうがいいとか??

そしてその先にカーテンでしきられた大きな部屋があり、ここが食堂と売店でした。ここでしばらく休憩とのことでしたが、ここが実は最後です。食堂は冷え切った体にうどんとかぜんざいとか温かいものが魅力的です。朝から入坑してもうお昼近いので小腹も空いたので、僕は朴葉すしを食べました。妻はぜんざい、同行した夫婦はニュートリノならぬシュートリノというシュークリームを食べてました。
売店ではGSAのTシャツ、ヘルメット、ストラップ、ステッカーのほか、神岡鉄道グッズやあまり関係なさそうな(笑)宇宙食とか海外の隕石とかが売ってます。商魂たくましいな〜と思いつつ、一番安価なステッカーを購入しました。ヘルメットなんて、来年はマイヘルメットで参加の人がいるのかな?

 

食堂にはもう使われていないトロッコがあり、当然これも運転席で記念撮影です。

 

ここで集合がかかって、入坑したときのマイクロバスに乗って外界に出ます。外に出るとそこはまた夏の暑い世界でした。ヘルメットを返却して観光バスに乗り換えて、また奥飛騨温泉口駅に戻ります。

最後にくじびきがあって、当たるとカレンダーがもらえます。僕ら4人のなかでは妻だけが当たりでした。 見るとこれも東北大のカムランドのものでした。スーパーカミオカンデ(東大)より力入ってますね。。。

朝は時間が全く無く、見ることのできなかった奥飛騨温泉口駅でしばらく遊んでました。この駅は廃線になった神岡鉄道の終着駅ですが、廃線や廃墟のイメージはまだありません。軌道もそのままで、いつでも復活できそうです。

昼食を食べに道の駅 スカイドーム神岡というところに寄りました。ここにはスーパーカミオカンデの内部施設の一部のを再現したものがあり、記念撮影しました。


今回のツアーは普段見れないものを見れるというちょっとマニアックなツアーで、かなり楽しめましたが、もう少し事前に勉強していけばもっと楽しめたと思います。帰宅してから妻が図書館からNHK プロジェクトX「スーパーカミオカンデ」というDVDを借りてきてくれてそれを見ましたが、行く前に見るべきでした。
企業色のない研究施設の見学はあまり機会がないのですが、研究するということ、未知なものに対する知りたいという人間の欲求は僕のような俗人には計り知れないものです。
カムランドの説明で最後の質疑応答で「何のために研究してるのか」と質問している人がいましたが、やっぱり生活に直結した研究成果を求める僕ら一般人とは違う世界にいるのだと思います。(だいたいそんな質問するなよ・・と言いたいところですね)。
前述のDVDでノーベル賞を受賞した小柴教授が面白いことを言ってました。「電子を最初に発見したときはそれが何の役にたつかわからなかった。しかし今は電子はたくさん活用されている」。知ること、研究することの目的は実はずっと先にあるのだと思います。

 

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